抜歯のデメリットDemerits
過去の本では、抜歯矯正はメリットよりデメリットほうが多く書かれていましたが、最近はあまり見ることはありません。ただ、デメリットが無くなったわけではありません。抜歯のデメリットは、
- 歯列の連続性を失う。
- 口の中が狭くなる。
- 歯の移動量が大きくなり歯周組織や歯根を吸収する。
- 上の前歯が下の前歯に被さり過ぎ易い。
- 症例によっては老けた顔になる。
過去の本では、抜歯矯正はメリットよりデメリットほうが多く書かれていましたが、最近はあまり見ることはありません。ただ、デメリットが無くなったわけではありません。抜歯のデメリットは、
従来のワイヤー矯正では抜歯しないで解決できなかったケースでも矯正用インプラントを埋め込む位置を調整すれば、前歯に後方向の力を加えることができるため、理想的なEラインを作れます。ただ、理想的なEラインになるかどうかはその人の顔の骨格で決まります。
1960年頃のアメリカで抜歯矯正が盛んになった頃のリケッツ理論が日本では普及しました。口を閉じた横顔のEライン(鼻の先端と顎を結んだ線)より少し内側に唇があるのが理想のEラインと言われています。美容整形で鼻を高くすれば、Eラインは変わります。古代ギリシャのミロのビーナスの横顔が静的な美の基準に選ばれたといわれます。Eラインは笑っていない時の基準で、これに合わせようとして抜歯をしたら、口元が貧弱になり、暗い陰気な顔と表情になります。東洋人は昔から横顔にはあまり注目はしません。正面からの顔、やや斜めに向いた顔を好みます。
東洋人は欧米人と比べて鼻が低く、口元も前に出ている方が多いためEラインと唇がわずかに接するあたりまでは理想的なEラインと言われています。
矯正で咬み合わせを良くするという言葉をよく見かけますが、総義歯も、ブリッジもしないで、咬み合わせの理論を習得するのは難しいでしょう。また、咬み合せが分かっていたら、小臼歯4本抜歯などはしないでしょう。一般に、歯科医は歯だけでなく、歯周病から顎関節、入れ歯、インプラントまで幅広い知識を持って治療を行おうとします。口に関する総合知識を持っていなくてはなりません。
若い人を対象としてきて、歯があるのを動かすだけというのと、総義歯までも含めあらゆることを行うのとでは、治療範囲がまるで違います。抜歯矯正している医院が多いようです。どこへ行っても抜歯が必要だと言われ、抜歯しないと矯正できないんだと考えてしまう人も多いと思います。私は自分の歯並びで、多少の前歯のデコボコがあるからといって、4本抜歯して矯正したいとは思いません。身内の子供が少し出っ歯気味だからといって、4本抜歯して矯正はまずしません。
また、上顎前突、下顎前突のときは遺伝の問題もあります。骨格そのものが飛び出している場合は、歯ならびだけでは、対応できないこともあります。抜歯矯正にしても、非抜歯矯正にしても、全てということは臨床ではあり得ませんが、小臼歯を4本抜かなくても、咬み合わせや歯並びを直すことは多くの方で可能です。但し、親知らずの抜歯はお勧めすることはあります。親知らずを置いておくと、親知らずの前にある大事な歯まで虫歯になりやくなるからです。
矯正治療の相談に行くと、「小臼歯を抜いて矯正しましょう!」という説明を受けることが多いと思います。歯を抜く矯正治療と、歯を抜かない矯正治療の大きな違いは、口の中を狭くするか大きくするかです。歯並びがガタガタになっている場合はV字型歯列になっていることが多いです。歯を抜いて歯列を小さいV字型に並べるか、歯を抜かずに広げてU字型にするかの違いです。奥の方の歯を後ろに動かすのは、非常に難しかったので、小臼歯を抜いて小さいV字型歯列にする矯正法が一般的で、今でもその傾向はあります。
歯を抜いて小さい歯列になっても見た目はきれいにはなりますが、口の中が小さくなりますので、舌の置く位置も後方に下り、喉の奥が狭くなり、気道が狭くなり、鼻への空気が通りにくくなります。この状態が口呼吸やいびきの原因になることがあります。よく話題になる睡眠時無呼吸症候群やいびきの原因は舌の後退が多く、舌が後退すると気道は閉鎖しやすくなります。